曖昧な業務分担、勤務態度による評価制度がテレワーク制度導入を阻む

上司が、部下が自分の目の届かない場所で働くことに不安を感じる理由として、「対面で話が出来ないと部下や業務の状況が把握できないから」という意見があります。しかし裏を返せば「直接話を聞くことで、はじめて業務が把握できる」状況だということです。
アメリカや欧米諸国と異なり、日本では「仕事に人をつける」のではなく、「人に仕事を割り振る」雇用形態となっています。したがって、業務の分担や責任の範囲が曖昧で流動的です。業務の分担が定まっていないということは、その人の成果も明確にすることが難しくなり、成果だけで人事評価をすることも困難です。そのため、上司による勤務態度の評価のウェイトが大きくなります。
つまり、テレワーク制度導入により部下が職場にいない状況が増えれば、上司はどのように部下を評価していいのか分からなくなってしまいます。そもそも業務が把握できていないことに加えて、責任や業務範囲が曖昧であるがゆえに部下に仕事を任せることができず、もしミスがあった場合は管理職の責任になるため職場以外で仕事をされると不安になるのです。このマネジメントのあり方が、テレワーク制度導入の大きな壁になっているのです。

成果を正しく評価するためには「業務の可視化」が必要不可欠

では、テレワーク制度の中で部下を正しく評価するためには何か必要なのでしょうか。まず第一に「業務の可視化」です。
部門内にどんな業務が存在し、どんなプロセスで行われ、それを誰が行っているのかを把握することが重要です。さらにはその業務の発生頻度、工数、リードタイムなどが分かれば、対面のコミュニケーションがなくても業務の状況を把握することも不可能ではありません。そして、業務を可視化できればアウトプット(成果)が見えてきます。成果が見えればアウトプットとそのプロセスの精度や工数で評価をすることができます。たとえ同じ職場にいなくてもどれだけのアウトプットをどのくらいの時間をかけて作成したかが可視化されていれば、上司の不安も解消されるのではないでしょうか。

HIT法による業務の可視化で上司の不安を解決

「業務の可視化」といっても一筋縄ではいきません。世の中、様々な手法やツールがありますが、当協会では業務プロセス可視化法「HIT法」の普及活動をしています。HIT法は「業務が見えない」「業務が測れない」「業務が改善できない」状態を解消する手法です。特許を取得したチャート化技法により誰もが簡単に業務を可視化でき、その業務のムダを明らかにして改善を促進させます。

「業務プロセスチャート化法」で業務を作業単位で可視化

HIT法は、業務を「1業務1アウトプット(成果物)」の粒度を最小単位と考えます。(例:議事録の作成、〇〇請求書の作成など)その最小単位の業務のプロセスを、記号を用いてチャート化することでそれぞれの詳細な作業手続きごと可視化することができます。アウトプット(成果物)に対する手続き・手順を中心としてチャート化をするので、チャートを書くだけでその業務の成果がわかります
チャート化による可視化の効果として、そのアウトプット(成果物)に対する手続き・手順を文章のみで書き表すのではなく、記号を用いてチャート化していくため、記載のヌケモレなく、誰もが誤解なく業務を理解して作業をすることが可能になります。さらに、記号の中にはムダの着眼点となるものを準備しているので、誰もが業務をチャート化するだけで改善ポイントを見つけることができるのがHIT法の大きな特徴です。

「有効工数化法」で作業単位の工数を可視化

HIT法では、成果をどのくらいの工数をかけて出せるのかも可視化することができます。通常、業務中には電話や声掛けなどの中断が必ず発生しますが、その頻度は一定ではありません。HIT法では、業務プロセス中にある作業単位で工数を記録することで、中断がなく最も早く実施できた場合の工数(=有効工数)を算出することができます。この有効工数に中断が起こる時間(=余裕率)を加味することで、目標とする工数が明らかになります。つまり、上司は職場にいないテレワーカーの工数が分かるので、顔を合わせなくても適切な時間管理が出来るようになります。さらに、業務のうちでどこの作業に時間がかかるのかも同時に分かるので、スキルアップや改善のヒントにもなるのです。

可視化により、業務を時系列順・機能ごとに体系化できる

HIT法でチャート化をした業務を、時系列順・機能ごとに体系化することで、管理者は業務の前工程や後工程などの大きな流れを簡単に把握することができます。企業によっては業務の一覧表を作成している場合もありますが、業務機能・時系列事に体系化されたものを作成するのは容易ではありません。HIT法では業務可視化の副産物として、業務の体系表が作成されます。したがって、部門(または企業)のどの範囲の業務にどれだけの時間がかかっているのかが一望できるので、より適切な人材配置も可能にします。
この場合はテレワーカーに任せた業務が部門機能のどこにあたるのかが明確になるので、対面で状況を把握せずとも業務がうまく流れているかどうかを体系表を元に確認することができるのです。

以上のように、HIT法を用いれば「対面でなければ不安だ」という上司の不安をすべて解決することができます。それだけではなく、担当業務による成果と工数が明らかになるので、成果で正しく評価をすることも可能になります。業務分担や責任の範囲も明確になり、テレワーク制度導入の障壁が下がるだけではなく、上司のマネジメント力や現場の納得感も高めることができる定性効果に加えて、HIT法で可視化をすることで業務の改善ポイントも発見することができます。テレワーク制度で業務の生産性を上げるだけではなく、既存の業務の改善も同時にすすめることでさらに大きな効果が得られます。働き方改革の機運が高まるこの時期に本質的な業務改善をお考えの方は、ぜひHIT法の利用をご検討ください。

まとめ:テレワークの実現・定着は「業務の可視化」から!

日本でテレワークが進まないのは、曖昧な作業分担・責任範囲により、成果で正しく評価を下せないことが大きな要因です。業務を可視化することで、まずは部門内にどんな業務があるのかを把握し、どんな成果を・誰が・どのくらいの工数で行っているかを把握できる仕組みを作りましょう。HIT法を使えば、テレワーク制度導入における懸案事項のすべてを解決することができますので、テレワーク制度導入の前にはHIT法での業務可視化をご検討ください。

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